長男は難病を抱えた重症心身障害児。
医療ケアもいくつもあります。
こう話すと、決まって言われることがあります。
お母さん、休んでる?
ちゃんと眠れてる?
たまには、息抜きでコーヒーでも飲んできて。
などなど。
私が休みもなく、自分の時間もなく、眠れてもいないくらい大変だと思われるようで、
皆さんお気遣いの言葉をくださいます。
とってもとってもありがたいです。
ですが、そんな時私はちょっとばかり申し訳ない気分になります。
だって私は・・・
疲れたらちゃっかり休んでるし
次男と一緒に毎日21時前には寝てるし
コーヒーもスイーツまでも楽しみまくっているのだから。
がっつりと自分を甘やかしています。
病気を抱える子を持つお母さんは、自分を犠牲にして、
朝から晩まで子のために懸命に生きている・・・
そんなイメージがありますよね?
私もそう思っていましたし、今まではどちらかというとそういうお母さんでした。
けれど、そうすると・・・
自分の心身の不調
きょうだいへの影響
夫へ八つ当たり
家族で過ごす時間の破綻
あれよあれよと、家庭にヒビが入っていきます。
自己犠牲から成り立つ生活ではダメなんです。
私が自己犠牲から、自分最優先に
どのように変わっていったのか、書いていきたいと思います。
あれもこれもやらなくちゃ!
発病当時の私は、治すために、良くするためにそれこそ自分の時間は全て捧げる勢いで
長男のケアをしていました。
鍼灸が良いと聞けば、東京から大阪へ。
食事療法が良いと聞けば、毎日何時間もかけて作り、
マッサージが良いと聞けば、せっせと日課にしたり。
そして、長男はだんだんと、訪問看護師や訪問ヘルパー、療育センターの通所やリハビリなど
様々な方が長男のケアに介入してくださるようになります。
もちろんありがたいんです。ありがたいのですが・・・
皆さん熱心な故、こうするといいよ、というアドバイスをたくさんいただきます。
すると、「うんうん、なるほど!早速やってみよう!」と
初めのうちはありがたかったアドバイスが次第に「またやることが増えた・・・」と
負担な気持ちが芽生えてきます。
何だか「お母さん、ちゃんとやってあげてよね!」と責められているようにさえ
感じてきたのです。
一番ツラいのは病気を抱えている子ども。
だから、支える母親はツラい・できないなんて言っちゃいけない。
子どもは頑張ってるんだから、母も弱音を吐いちゃいけない。
だから本音は誰にも言えなかった・・・
というより、本音を自分ですら気付いていなかったと思います。
ムリだ・・・
どんどん増えていく、終わりのない長男のケア。
加えて、次男の育児に、家事に、やたら多い福祉の書類の数々。
極めつけは、こういう生活をしていると自信がなくなってくるんです。
突発的なケアや育児で、家事や作業が多々中断される
↓
進まない、気が散る、1日のすべきことが終わらない
↓
自分は何てうまくこなせないんだろう…という考え
↓
自己嫌悪に陥り、意欲すらなくなっていく
こんな悪循環。これに伴い、自分の身なりもショボショボになっていきました。
ついには・・・
・ストレスが爆発!ことあるごとに夫にやつあたり、そしてケンカ
・家の中は洗濯物や書類や食器の山でぐちゃぐちゃ
・次男はさびしさからますますママにべったり
・むせ込む長男を目の前に、もう嫌だと脱力感
・わけもなく涙が出てくる
もう今のやり方では無理でした。
自分の心を無視していた・・・
このままでは、家族が不幸になる・・・
この時の私は、せっかくかかわってくださっている方々が
たくさんいるにも関わらず、頼ることがまったくできませんでした。
相談すれば力を貸してくれる人がたくさんいるのにも関わらず
私は本音を隠し、「大丈夫です」「やってみます」
と平然とケアをしているフリをしていました。
「誰か助けて」
「もう一人じゃできない」
という心の声をことごとく無視していたのです。
そして、自分の本当の気持ちすら、自分でわからなくなっていたのです。
けれど、いい加減危機感を感じた私は、まずは自分の本当の気持ちを
吐き出さなくては、と考えました。
まず自分の本当の感情を出してみる
なぜ周りの人に相談できなかったのか。
病気を抱える子どもの母親像の思い込みから相談できなかった。
それもありますが、よく考えると根本の原因は、自分が何に対して困っているのか、
何にイライラしているのかさえ、自分自身で把握できていなかったから。
ここでは割愛しますが、私はいわゆるアダルトチルドレン。
幼少期から本当の気持ちを出せずに生きてきたため、
自分の気持ちを出すのがとてもとても苦手です。
というより自分が何を言いたいのかが自分でわからないのです。
そこから改善すべく、
まずは、ネガティブな感情をすべて書き出してみました。
イライラする時
悲しい時
さびしい時
やりたくない時
憂鬱な時
書ききれないくらい、真っ黒な気持ちがこれでもかって程でてきました。
涙がでるほど苦しい作業でした。
けれど、書ききってみると、少し気持ちがスッキリしたんですよね。
ここまでは以前から何度かやったことがあったのです。でも今回は根本から改善したい!
「なぜ?」そう思うのかもじっくりと考えてみました。
すると、
・親に、夫に、認めてほめてほしかった
・話しを聞いてほしかった
・一人、何も考えなくていい時間がほしい
こんな気持ちがでてきました。
自分から助けを求めてみる
私は自分の気持ちは飲み込んで生きてきました。だから
「自ら気持ちを伝えることで、状況を変えられる」
という、おそらく皆さん当たり前の選択肢が、
恥ずかしながら本当にまるで頭になかったんですね。
受け身だから、何か困ると人のせい環境のせいって思う思考だったんです。
それが、自分が動けば周りも変わるんじゃないか・・・という視点ができたのです。
私にとっては衝撃的な気付きでした。
今までも、親や夫、周りの方々はたくさん手を差し伸べていてくれていた。
それを拒否したり、自分の思う通りじゃないとふくれたり、
うまくいかなくしていたのは私だったんです。
これにやっとやっと気づいた私は、自分の正直な気持ちを不器用ながら
ひとつひとつ伝えること、まずこれを意識するようにしました。
そうして、皆に助けてもらってできた時間を誰のためでなく、自分が心からしたいことに
使います。すると、面白いように、状況が変わってきたのです。
力が湧いてきた
自分の気持ちを大切に、正直に伝えたり行動すると、周りの人も助けてくれるんですよね。
パワーがみなぎるようでした。
自分の時間をきちんと取ると、心に余裕ができます。
その余裕こそが、長男や家族などへのやさしさの元となります。
自分が満たされて初めて、自分以外に目を向けられるんです。
本当に、人って心と身体、それぞれに休息と栄養が必要だとつくづく実感しました。
そこで、家族の目標を再設定。
目指すのは、家族みんな(私も含めてです)が大笑いできるような楽しく安心できる家庭。
そのためには労わり合う気持ちを大事に!(母だけで抱えない)
助けてほしい時は自ら言うこと!(無理しない)
結果とまとめ
こんな風に、自分の気持ち最優先して行動してみると、なんてことか以前より長男に
してあげられることが増えたんです!
自分の心身がスッキリしていて、元気もあるので、「これしてあげたいなぁ」と思った時に、
スッと行動に移せるんですよね。
そして、夫への思いもモヤモヤイライラしたものから「頼りがいがあるなぁ」と
とても良いものへ変わりました。
すると、こういう私の心の変化からくる行動の違いって次男はよ~く見てるんですよね。
お兄ちゃんがママのマッサージで気持ちよさそうだったり、パパとママが仲良くおしゃべり
していたり、自分も家族の一員として頼られると、すっごく嬉しそうな顔をするんです。
「自分最優先」というと、一見自分のわがままを優先させる・・・
という風に受け取られるかもしれません。
でも長い長い介護生活において、自分をゴキゲンに保ったり
休息したり、自分の状態を常に良くしておくことは必要不可欠。
以前の私のように、息切れをして、力がでなかったり、あたりちらしていたら、
長男も大切な家族も守れません。
「自分最優先」って自分の心身を大切にすることです。
当たり前のように思うけれど、特に介護や育児などの場面では忘れられがちなことです。
私は、そんな当たり前だけど大切なことを長男から学んだような気がします。